「貴方の翼」




夢を抱けと 誰かが囁く


当てもなく 彷徨い続ける私を


夢の世界から 誰かが引きずり出す



抱いた夢は 大きすぎ


小さすぎた私は 夢に押し潰されて


悲鳴をあげようと 喘いでも 


咽の奥は 誰かの欲望に灼かれているから



光の視えない街角で 淋しげな背中が行き交う中


貴方は独りで唄っている


哀しさを 淋しさを 


立ち尽くす私の 叫びをも


全てを羽にかえ 空へと放っていく


うつくしい翼で 私を包み込んで



何度 “さよなら”の背中を見送っても


いたみすら 感じなかったこと


ずっと ずっと 強さだと思っていた


ずっと ずっと 強さだと信じていたかった



夢を抱くのには 小さすぎて


大切な人を守るのには 不器用すぎる私に


降り注いだ 真っ白い羽


ずっと 殺しつづけていた泪と叫びが


貴方の元へ 届いた瞬間


優しい貴方は 大きな羽で 静かに微笑んでいた



貴方は今も 独りで唄っている


真っ白い羽を 惜しみなく降らして


次の私を 待ちながら



優しい唄を 唄いながら 


優しすぎる貴方は 今も独りで


まだ 唄っているの? 


うつくしい翼を 広げたまま


“さよなら”の背中を見送りながら 淋しさの泪に頬を濡らしたままで


私に降らしてくれた 羽よりも


他の誰かに降らしているハズの 羽よりも


もっと もっと たくさんの泪を


貴方は 流し続けているのに



光の視えない街角で 淋しげな背中が行き交う中


貴方は独りで 唄っている


哀しさを 淋しさを
 

歩き行く誰かの 叫びをも


全てを羽にかえ 空へと放っていく


うつくしい翼で 全てを包み込んで



たった独りで 淋しさに泣き濡れたままで


貴方一人が 救われないままで