「X'mas」



ベルの澄んだ音色の響く中
ぼくはもう 永遠の時の中へ
貴女はまだ 苦しみの波の中で
それぞれの世界
一つだったモノが 二分されてしまった
ねぇ 全てが遅すぎたね
最後まで云えなかった言葉達が
僕を この世界から離れさせない


そう、僕が生涯でたった一度だけ
神に祈りを捧げた クリスマス
貴女が心待ちにしていたこの日に 云おうと思ったんだ
貴女から たくさん貰った愛を
受け止めて もっと 多くの愛を
そう 伝えようと思っていた


遅すぎたんだね
唐突に 宙に舞った身体
待ち合わせの場所 大きなツリーの立つ広場
其の光景を頭に描きながら
歩き慣れた街並みの 有り触れた交差点で


貴女の泣き叫ぶ声が 響くから
捧げてくれた愛が 絡むから
ねぇ 僕はこの世界から離れられない
僕が 愛の言葉と共に渡そうと思っていたリングを
握りしめて泣いている貴女が 視えるのに
ごめんね
僕は 貴女に幸せを届ける サンタにはなれなかった
もう何も してあげられない


最後まで 云えなかった言葉
たった 一言だったのに
泣いてる貴女を 抱きしめる腕がない
もう 愛の言葉を口にしても あなたには聴こえない
手が白くなるほど 強く握りこんだリング
貴女がそっと 其の薬指にはめてくれても
もう其れは 戒めにしかならなくて


ごめんね
僕は あなたに幸せを届ける サンタにはなれなかった
あぁ 云えなかった言葉達を
心の底から 貴女に向かって叫んで
もう僕は 行かなくちゃ
きっと貴女には 僕よりももっともっと素晴らしい
サンタがまた 現れるはずだから


もう 時間がない
だから最後に どうか
伝わるだろうか? 最後まで云うことの出来なかった愛の言葉は
「幸せになって下さい」 たった一つの祈りと共に
「愛しています」 たった其れだけのこと
何よりも伝えなければならなかった 大切なことは


聞こえるはずのない声を 振り絞って
遅すぎた 愛の言葉を今
貴女へ