「時の河」


闇の中で 場所すら判らなくて
誰もいない 皆ただ過ぎ去って逝くだけ
貴方さえも

手に触れたものは 愛おしく
けれど 優しく包み込めば溶けて消え
淋しさだけを残し

どうせ消えるのなら 無ければいい
失くすのなら 知りたくもない
見たくないと 眼を瞑り
聴きたくないと 耳を塞ぎ
触らないよう 小さくなって

闇の中で 時の河は全てを押し流し
誰もいない 皆ただ離れ去って逝くだけ
貴方さえも

影すら残さない 全てが闇に溶けて消え
何もなくなる ただ私の内に
淋しさだけを残して

温もりは 冷えゆく感触だけを与え
優しさは 切なさを生み
愛しさは 息もできなくなるほどの淋しさを残して
貴方が いなくなる

どうせ消えるのなら 出逢わなければ良かった
いつかは 置いて逝かれるのだから
いつかは 棄てられてしまうのだから
愛さなければよかった
今更どれほど悔やんだとしても もう
私の中から 貴方の残像は消えないのに

愛おしい貴方が 消えた
流れ逝く時に身を任せたまま 他の全てと同じように
また 静寂が訪れて
誰もいない 皆ただ過ぎ去って逝くだけ
時の河は 私の泪をも浚ってゆく

闇の中で なにもなにもなくて
誰もいない 皆ただ過ぎ去って逝くだけ
貴方さえも