「嘘」 (改訂版です)


何もない虚空の向こう 必死で伸ばした手は
鮮やかに残る 紅い残像に触れた
いつも いつだって其処にいるのに
この世の何よりも 君は 僕に遠くて
ほら君が 紅い果実にキスをしながら 
又 手の届かない処で微笑んでる
美しい蝶々は 気ままに踊り続けて
僕は それを追い続ける
御仕舞の無い 君が大好きなおいかけっこ


知っているんだ
僕を試して 暇を潰しているだけの君を
知っているんだよ
君の隣で笑う 他の男たちのことだって
けれど 
麻痺した僕の思考は 艶やかな君に囚われていくばかりで
掠れた声は 君への愛を囁くばかりで
どうしようもなく 惹かれていく
軽やかに舞う 一羽の蝶々に


「愛してるの」と 何回聴いたことだろう
「愛してるわ」と いつもいつも深いキスをしてくれて
首に回された細い腕よりも 熱い唇は
嘘偽りを熔かし 全てを真実へと創りかえていく


拙さを通り越した あんな嘘に騙されるほど莫迦じゃない
たった一つのキスだけで誤魔化されるほど 甘い人間じゃない
でもそれは 君に逢うまでの噺で


もう ダメなんだ
躯に伝う 君の熱だけで
紅よりも鮮やかな唇に 吐息を重ねただけで
深い瞳に 見つめられただけで
全て嘘でも良いと 思ってしまうんだ
君が今此処にいてくれるなら もうそれで良いと
僕は 僕を含むこの世界の何よりも 
君を 愛してしまったから


ねえ もっと云って
「愛してる」って もっと もっと
僕の理性を奪い去って 壊して 狂わせてよ
「愛してる」と それだけを
もっと もっと 繰り返して
君が僕を抱きしめて 「愛してる」ってキスしてくれるなら
僕はもう そのまま死んでしまってもかまわないから


なんだって 君の思い通りだよ
望むように してあげる
だから 叶えて
もっと もっと
「愛してる」と それだけを繰り返していて
その囁きの中で死ねるなら もう
それが嘘だって かまわないから


君の綺麗すぎる瞳を 拙さの残る甘い声を
細い手足を 紅い唇を
君という全てを 愛しているから
だから僕は 君しかいらない
僕の翼も 煌めく愛も 囁く唄の一つまでも
全て君に あげるから
だから 叶えて
少しで良い 少しだけで良いから
僕のことを 愛してよ
それとももう 少しくらいは愛してくれてる?


可憐に舞う君は 一体何を望む?
僕の身一つでは足りないと云うなら 何でも持ってこよう
全てを 君にあげるよ
だから 叶えて
僕を 愛して欲しいんだ
僕が狂うほどに 「愛してる」とだけ繰り返して
僕にはもう 君しか見えなくなっているから


ねえ もっと云って
「愛してる」って もっと もっと
僕の理性を奪い去って 壊して 狂わせてよ
「愛してる」と それだけを
もっと もっと 繰り返して
君が僕を抱きしめて 「愛してる」ってキスしてくれるなら
僕はもう そのまま死んでしまってもかまわないから


なんだって 君の思い通りだよ
望むように してあげる
だから 叶えて
もっと もっと
「愛してる」と それだけを繰り返していて
その囁きの中で死ねるなら もう
それが嘘だって かまわないから


「愛してる」って 甘い声で
愚かな僕を 騙していて






ちなみに改訂前はコチラ